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配当政策は株主価値を高めるか?

配当増額、愚か賢か
以下に興味深いニュースを見つけましたので、紹介します。

米投資顧問会社、小野薬品に7倍の年間配当を要求
(2007年4月9日 読売新聞より)
米国の投資顧問会社、ブランデス・インベストメント・パートナーズ・エル・ピーは9日、小野薬品工業に対して、2007年3月期の年間配当を、小野の予定額の7倍にあたる1株あたり700円にするよう求める株主提案の書面を提出したと発表した。ブランデスは小野薬品の発行済み株式の約7%を保有しており、小野薬品の内部留保が必要以上で、株主還元を強化すべきなどと主張している。小野薬品は「現時点で対応は未定」としている。

***

増配は現実的には株価上昇に繋がることが多いのですが、果たしてファイナンス的には正しいのでしょうか?
ここではまず、効率的かつ合理的な市場という条件下で考えてみることにします。

『効率的かつ合理的な市場』では、以下の条件を前提とします。

  • 企業関係者間に利害対立は存在しない。
  • 企業とマーケットは同じ情報を有している。
  • マーケットは完全に合理的で、取引コストや税金は存在しない。

んな世界があるか?と思われるかもしれませんが、あくまで『効率的かつ合理的な市場』というモデルでの話です。
余剰金をC、実物資産の現在価値をV、発行済み株式数をNとすると、株価Price(0)は


Price(0) = (C+V)÷N

となります。企業が余剰金Cをすべて配当すると発表したときの株価をPrice(1)とすると、一株あたりの配当金はC÷N、配当後の企業価値は実物資産しかありませんので、配当後の株価は(V÷N)になります。
つまり、

Price(1) = (C÷N)+(V÷N)

が成立することになり、増配の発表前後において株価は変動しないことになります。まるできつねに包まれたような話ですが、『効率的かつ合理的な市場』というモデルではそうなります。これをMMの配当無関連命題と呼びます。

***

ところが現実には配当には税金が課せられますので、税率をT(日本の場合は40%)とすると、税引き後の株主価値はC×(1-T)+Vとなり、CTの分だけ株主価値は減少します。効率的かつ合理的な市場においては増配は愚の施策になりますが、現実の世界は効率的でも合理的でもありませんので、増配は株価上昇の一因になっています。

これを説明するために用いられるのが、シグナリング仮説やフリーキャッシュフロー仮説です。
シグナリング仮説では、企業はマーケットより情報を有しているとみなし、配当政策の変更には、当該企業の将来の収益動向や現在の株価水準に関する経営者の見方が含まれることが示唆されるため、増配の発表は株価の上昇要因となると説明されます。

またフリーキャッシュフロー仮説では、企業に蓄積された余剰資金が株主価値最大化のために活用されるとは限らないため、株価はその懸念を織り込んでディスカウントされているが、大幅な増配によって株価のディスカウントは解消されると説明されます。

***

今回の米投資顧問会社の増配要求は、内部留保の有効活用をアピールした株価ディスカウントの解消を狙っていますので、ディスカウントが解消されるや否や売り抜ける可能性が高そうです。長期保有が前提の安定株主ならば、自社株消却を要求しても可笑しくありませんが、今回は株主価値を損ねる増配要求ですから、米投資顧問会社は投機目的だということが言えると思います。
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[ 2007/04/11 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

自社株消却その2

自社株消却、愚か賢か
自社株買いをして消却すれば、株主還元に繋がるかと言えば必ずしもそうではありません。
以下に興味深いニュースを見つけましたので、紹介します。

***

自社株買い、最高の7.5兆円――昨年度5割増、654社実施、財務戦略の柱に。

(日経金融新聞 2007/04/10より)
企業の自社株買いが急増している。二〇〇六年度は総額約七兆五千億円と前年度より五割近く増え、過去最高を更新した。自社株買いによって資本効率の改善や株価上昇、買収防衛効果などが見込めるためで、企業の財務戦略の大きな柱になりつつある。ただ好業績で潤沢になった手元資金の有効活用を迫られたあげくの窮余の一策という面もあるようだ。


自社株買いでは、買い取った自社株が株主資本から控除されるため、一株利益の増加や株主資本利益率(ROE)の改善につながる。また市場での流通株数が減り、需給改善効果もあることから株主配分策にもなる。

買い付け金額が大きい企業をランキングすると、上位に医薬、鉄鋼関連が目立つ。共通するのは業界再編が活発な点だ。四位のアステラス製薬、五位の武田は二千億円超の自社株買いに踏み切った。武田は約一兆七千億円と日本企業で最大の手元資金を抱え、稼げば稼ぐほど資本効率が悪化するのが悩みのタネ。〇六年三月期までの三年間でROEは四%低下したが、自社株買いで歯止めをかける。

豊富な手元資金は株主から「資産を有効活用していない」と批判されるうえ、被買収リスクを増大させるもろ刃の剣でもある。医薬業界は時価総額の内外格差が大きく、外資による買収リスクが高い。武田同様、アステラスや二十七位の大正製薬など豊富な手元流動性を抱える企業の自社株買いには、手元資金を活用しつつ、需給改善による株価上昇を狙う買収防衛の意図もありそうだ。

ただこうした自社株買いは資金使途として非効率との指摘もある。アステラスの場合、高値での自社株買いが目立つ。株価が三千円前後だった〇二―〇三年の二年間は六百六十億円強だったが、四千円―五千円台の昨年度に二千億円強をつぎ込んだ。同業他社の首脳は「高値づかみ。経済合理性で説明できない」と批判的だ。

***

自社株買いは

  • 企業に有効な投資案件が乏しく
  • かつ自社の株価が割安だと判断されたときに
  • 配当施策より(税金繰り延べの面で)マシな行為

です。こう書くと、自社株買いはポジティブな施策には見えませんね(笑
投資案件の無い、IR活動不足の無成長企業による窮余の一策という見方もできますから。

アステラス製薬の自社株買いは、いったんは株価が上昇するかもしれませんが、高値での自社株買いは企業価値を損ねますので、長期的に見ると株主を疎かにしている行為だと思います。このような施策を行う会社には安定株主は寄り付きません。バフェットが言うように、株主が会社を選ぶのと同様に、会社も株主を選別する施策を行う必要があるように思います。安定株主を増やして買収防衛を行いたいのであれば、安定株主の好むような還元方法を学ぶべきでしょうね。
[ 2007/04/10 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

自社株消却その1

自社株消却と株価
僕の勤務するA社では、最近やたらと自社株買入消却を行なっています。金額も相当なもので、ウン千億円に達しています。そんな金があるなら、もっと他のものに投資しろよっと言いたくなるのですが、経営陣は自社株消却がベターだと判断したようです。

自社株消却を行なう一番の理由は、5月の三角合併解禁を睨んだ投下資本の有効活用でしょうね。ROEを高めるには手っ取り早い方法ですし、株主資本コスト(A社では6%)も抑えられるので、まともな投資先がない時には許容される株主還元策なのでしょう。

***
自社株消却は現実的には株価上昇に繋がることが多いのですが、果たしてファイナンス的には正しいのでしょうか?
ここではまず、効率的かつ合理的な市場という条件下で考えてみることにします。

『効率的かつ合理的な市場』では、以下の条件を前提とします。

1、企業関係者間に利害対立は存在しない。
2、企業とマーケットは同じ情報を有している。
3、マーケットは完全に合理的で、取引コストや税金は存在しない。

んな世界があるか?と思われるかもしれませんが、あくまで『効率的かつ合理的な市場』というモデルでの話です。

A社は超優良会社で有利子負債が0ですので、以下の計算では考慮しないものとします。
余剰金をC、実物資産の現在価値をV、発行済み株式数をNとすると、株価Price(0)は

Price(0) = (C+V)÷N

となります。A社が自社株買いを発表したときの株価をPrice(1)とすると、A社は余剰金で『C÷Price(1)』分だけ発行済み株式を購入することができます。自社株買入消却後の発行済み株式数は『N-C÷Price(1)』になりますね。

余剰資金を使用した後の株式価値は実物資産だけですから、Vということになります。つまり

V = Price(1)×{N-C÷Price(1)}

が成立します。この式を変形すると

Price(1) = (C+V)÷N

となり、自社株買入消却前後において、株価は変動しないことになります。まるできつねに包まれたような話ですが、『効率的かつ合理的な市場』というモデルではそうなります。これをMMの無関連命題と呼ぶそうです。

現実的には企業の方がマーケットより情報を持っているし、取引コストや税金もかかるので、モデルのように株価が変動しないということはあり得ないのですが。。。

***
次回は税率を考慮した自社株買入消却、行動ファイナンスからみた自社株買入消却について書こうと思います。
[ 2007/04/09 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

A社の株主資本コストその2

続、A社の株主資本コスト6%は妥当か?
また今回も懲りずにファイナンスの勉強をしてみます。僕はA社の経営方針に疑いの目を向けているので、徹底的に分析したいと考えています。前回はCAPMを用いて株主資本コストの検証を行いましたが、今回は配当割引モデル(DDM)で検証を行います。

・CAPMによる株主資本コスト算出に関してはこちら を参照のこと。
・DDMの説明はこちら を参照のこと。

DDMでは以前勉強したように、以下のような式で株価を表わすことが出来ましたね。

Price(0) = Div(1)/(r - g) ・・・①

Price(0):現在の株価
Div(n):n年後の配当
r:株主資本コスト
g:配当成長率

上記の式を分解しますと、

r = {Div(0)×(1 + g)/Price(0)} + g ・・・②

となります。株主資本コストは、現在の株価と配当、それと将来の配当成長率から算出できるということを意味しています。実際に過去のデータを用いて株主資本コストを算出してみますと


r = {A社直近の配当金×(1 + 0.059)/A社株価} + 0.059 = 0.076

となり、A社経営陣が唱える株主資本コスト6%設定はDDMからも妥当であることがわかりました。(配当金と株価の具体的数字はプライバシーの観点から伏せてあります。)
やはり感覚的判断(A社に対する疑念)と理論計算で導き出される解では乖離があるものですね。少しでも合理的判断が行えるようにファイナンスの勉強を継続していきたいと思います。
[ 2007/01/29 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

株価の決定理論(3)

配当からTOPIX連動型ETFを求め、株価の成り立ちを学ぶ
前回、前々回でDDMを勉強し、株価の理論計算式を学びました。

株価とは何か?
配当割引モデル(Dividend Discount Model:DDM)

そこで今回は、応用として実際に配当から株価を計算してみます。
配当が永遠に続くと仮定した場合、前回導き出した式

Price(0) = Div(1)/(1 + r) + Div(2)/(1 + r)^2 +,,,+ Div(n)/(1 + r)^n ・・・①

を利用してもいいのですが、ここで配当金Divが毎年gの割合で成長する仮定すると、

Div(n) = Div(n-1) × (1 + g)

と表わすことが出来ます。つまり①式は

Price(0) = Div(1)/(1 + r) + Div(1) × (1 + g)/(1 + r)^2 +,,,+ Div(1)× (1 + g)^n-1/(1 + r)^n ・・・②

となり、これは単なる等比数列ですので

Price(0) = Div(1)/(r - g) ・・・③

という超簡単な式に変形できます。もう一回整理しますと、③式の意味するところは、配当金Divが毎年gの割合で増える株式の現在株価はPrice(0)であるということです。この式は成長型永久債にもそのまま適用でき、毎年入ってくるキャッシュフローCが毎年gの割合で増える永久債の現在価値PVは、ディスカウントレートをrとすれば

PV = C/(r - g) ・・・④

で表わすことが出来ます。債券も株式もみな同じ計算式で算出できるんですね。

では実際に、③式を使ってTOPIX連動型ETFのPrice(0)を求めてみましょう。Price(0)を求めるためには、③式の期待リターンrと成長率gを算出する必要があります。
期待リターンrに関しては、以前「株式資本コストの算出 」の際に勉強しました。以下の式で表わせましたね。

期待リターンr = β×マーケット・リスクプレミアム + リスク・フリーレート(10年国債利回り)

TOPIX連動型ETF(1306)のβ値は1.007ですので、マーケット・リスクプレミアムに7%(※)、リスクフリーレートに1.7%を代入しますと

期待リターンr = 1.007 × 7 +1.7 = 8.75%

となります。成長率gは過去3年間の配当金 の幾何平均をとって7.98%を採用することとします。TOPIX連動型ETFの直近の分配金は1405円(2006/07)でしたので

Price(0) = Div(1)/(r - g) = 1405/(8.75% - 7.98%) = 182,118円

となりました。現在のTOPIX連動型ETF(1306)の株価は172,000円ですので、DDMによる大雑把な計算でもそれらしい値が出てきましたね。

前回、前々回と3回にわたって株価とは何かについて学んできましたが、株価とは何かについてわかってもらえたでしょうか?多くの日本人はとかく売買を繰り返してキャピタルゲインを狙うことが株式投資であると勘違いしていますが、そうではなく、株価は“将来に渡って得られる配当金の合計を現在価値に割り引いたもの”だということです。売買を繰り返す株式トレード(ケインズの美人コンテスト)を否定するつもりはありませんが、株式投資の基本はホールドすることだと知ってもらいたいと思います。

***

(※)ここではマーケット・リスクプレミアムに7%を使用しましたが、日本市場では5-5.5%あたりが妥当なようです。仮にマーケット・リスクプレミアムに5%、株価に172,000円を代入すると、成長率gは4.18%になります。こちらの数字の方が過去のデータから算出される7.98%より妥当な気がしますね。
[ 2007/01/17 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

株価の決定理論(2)

配当割引モデル(Dividend Discount Model:DDM)
さて前回、株価は企業の将来性や収益力を反映するという前提で考えるということにしました。
今回は実際に数学的に株価を算出しようと思います。なお、教科書は「道具としてのファイナンス」です。本当に良い本ですので、投資理論などに興味がある方は是非ご一読を。

投資家が株を購入する際にはインカムゲイン(配当)とキャピタルゲイン(株価上昇)を期待します。
現在の株価をPrice(0)、1年後の株価をPrice(1)、インカムゲインをDiv(1)としますと、期待リターンrは

r = {Div(1) + Price(1) - Price(0)} / Price(0) × 100

で表わすことが出来ます。この式を変形すると、

r = {Div(1) + Price(1)} / Price(0) -1  ・・・①

Price(0) = {Div(0) + Price(1)} /(1 + r) ・・・②

となります。②式は、現在から1年後に2年目の配当Div(2)と株価Price(2)を予測することで、Price(1)の予測が可能であることを示しています。つまり

Price(1) = {Div(1) + Price(2)} /(1 + r) ・・・③

の式が成立します。この③式を②に代入してみますと

Price(0) = Div(1)/(1 + r) + Div(2)/(1 + r)^2 + Price(2)/(1 + r)^2 ・・・④

同様の考えでn年目の株価を考えてみますと

Price(0) = Div(1)/(1 + r) + Div(2)/(1 + r)^2 +,,,+ Div(n)/(1 + r)^n + Price(n)/(1 + r)^n ・・・⑤

で表わすことが出来ます。現実的には企業は永遠には存続しませんが、投資理論においては永遠に存続する(n→∞)ものと仮定して株価を算出します。すると最終項のPrice(n)/(1 + r)^nは0に収束しますので、

Price(0) = Div(1)/(1 + r) + Div(2)/(1 + r)^2 +,,,+ Div(n)/(1 + r)^n ・・・⑥

となります。この⑥式が意味していることは、株価は将来に渡って得られる配当金のみによって決定されるということです。つまり、株価は将来に渡って得られるキャッシュフロー(配当金)を投資家の期待リターンである株主資本コストで割り引いた現在価値の総和であるということが言えます。この考え方を配当割引モデル(Dividend Discount Model:DDM)と言うそうです。

株価って意外と単純な計算式で表わせるものなんですよね。さて次回は勉強の総決算として、TOPIX連動型ETFの理論株価の算出を行いたいと思います。
[ 2007/01/16 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

株価の決定理論(1)

株価とは何か?
こんにちは、最近ファイナンスの勉強に凝っている僕です。僕の投資スタンスは“自分の理解できないものには投資しない”ということですので、理解を深めるべく勉強は怠らずに継続しています。今回の勉強の目的は株価の算出方法を学び、株価とは何かについて考えたいと思います。

そもそも株価とは何でしょうか?これは大きく分けて以下の2つの考え方があります。

(1)ケインズの美人コンテストに代表される、投資家心理の相乗作用の産物
(2)企業の将来性や収益力の反映したもの

(1)は投資家のみんなで株価の当てあいっこをするというものです。ある銘柄の株価は上昇するのは、他の人が「株価が上がる」と思うからで、企業の将来性や収益力には関係ないという考え方ですね。そんなバカな!と思われる方がいるかもしれませんが、人間の行動は合理的ではなく、また市場は完全に効率的ではないので、(1)の現象は頻繁に起こっています。バブルやライブドアショックがいい例ですね。

(2)の考え方は、あらゆる金融資産は将来のキャッシュフローに基づく適正価格があり、効率的な金融市場では市場参加者が適正価格を推定して価格を付けているというものです。短期的には株価はフラフラしますが、長期的には企業の将来性や収益力の反映した適正価格に収斂するという発想ですね。市場が完全に効率的ならば(2)の考え方は100%正しいのでしょうが、現実的にはそうではありません。ですからあくまで机上の投資理論として心に留めておく必要があります。

次回は(2)の前提に立って理論株価を数学的に勉強します。
[ 2007/01/15 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

A社の株主資本コスト

A社の株主資本コスト6%は妥当か?
今回は僕の勤めるA社について、企業価値分析を行いたいと思います。といいますのも、僕は自社株積み立てを行っていますので、自己防衛のために会社の公表値の検証を行う必要があるからです。ちなみに行動ファイナンスから見た自社株 については既に検証済みです。

A社の株主資本コストは6%と設定されており、現在この数値が業績連動賞与に組み入れられています。

CAPMによれば、

期待リスクプレミアム = β×マーケット・リスクプレミアム
(期待収益率 - リスク・フリーレート) = β×(マーケット期待収益率 - リスク・フリーレート)


という関係式が成り立ちますので、

期待収益率 = β×マーケット・リスクプレミアム + リスク・フリーレート(10年国債利回り)

と表わすことが出来ます。
日本市場のマーケット・リスクプレミアムは5~5.5%、またA社のβ値はBloombergのデータから0.673とわかりますので、

期待収益率 = 0.673×5~5.5% + 1.7% = 5.07~5.40%

となり、A社の提示する株主資本コスト6%は妥当であることがわかりました。株主はインカムゲインとキャピタルゲインの合計で年利回り6%を要求しているということですね。

A社を含め、製薬業界はどこも新薬不足(とジェネリックの拡販)で収益が伸び悩んでおり、自社株消却による資本圧縮やリストラによるコスト削減、合併による新薬開発費の捻出、海外への販売網シフトというダイナミックな施策に取り組んでいます。従業員サイドで見ると、給与は増えないしリストラはあるしで踏んだり蹴ったりですが、逆に企業側から見ると、さまざまな施策を打ってでも企業価値の持続を図らねばならず、企業の使命は“永久に存続する”ということにも頷ける気がします。
[ 2007/01/14 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

国債の現在価値(3)

個人向け国債に投資すべきか?
個人向け国債は中途換金でも元本割れしない(直近利子放棄のペナルティはあります)金融商品ですが、果たして投資する価値はあるのでしょうか?ここでは前回勉強した“金利の期間構造理論”を用いて検証しようと思います。

国債の現在価値(1) ←“金利の基本的な考え方”はこちらを参照のこと
国債の現在価値(2) ←“金利の期間構造理論”はこちらを参照のこと

ケース1:固定5年個人向け国債
適用利率の算式は「基準金利-0.05%」で行ないます。基準金利5年国債の利回りは2006/12/12時点では1.25%ですので、適用利率は1.20%(税引き後0.960%)になります。中途換金のペナルティは、直近4回分の利子(税引前)相当額の放棄です。原則2年以上の保有が前提になり、流動性にやや問題があります。

割引率にスポットレート を用い、固定5年個人向け国債100万円の現在価値PVを計算してみます。

PV = 0.96/(1+0.0053) + 0.96/(1+0.0074)^2 +0.96/(1+0.0088)^3 + ,,,+ 100.96/(1+0.0119)^5 = 98.94万円

となります。正味現在価値NPVは、現在価値PVから投下資本を差し引けばよいので
NPV = 98.94 - 100 = -1.06万円

となり、NPVはマイナスになりました。上記のスポットレートを用いた計算では、固定5年個人向け国債は投資するに値しない金融商品と結論づけることが出来ます。

ケース2:変動10年個人向け国債
適用利率の算式は「基準金利-0.8%」で行ないます。基準金利10年国債の利回りは2006/12/12時点では1.64%ですので、適用利率は0.84%(税引き後0.672%)になります。中途換金のペナルティは、直近2回分の利子(税引前)相当額の放棄です。原則1年以上の保有が前提になります。流動性はやや良好といったところでしょうか。

ここでも割引率にスポットレート を用い、変動10年個人向け国債100万円の現在価値PVを計算してみます。こちらの場合は適用利率が半年に一回見直され、キャッシュフローが一定ではないので計算はやや複雑になります。キャッシュフローは10年後のスポットレート-0.8%の利率に20%の税金を控除した値を用いて計算します。

PV = 0.672/(1+0.0053) + (1.652-0.8)*0.8/(1+0.0074)^2 + ,,,+ ((1.996-0.8)*0.8+100)/(1+0.0163)^10 = 92.53万円

となりました。正味現在価値NPVは-7.47万円となり、これまた投資する価値なしという結論が導き出せました。
ちなみに変動10年個人向け国債でNPVが0になる適用利率は「基準金利-0.203%」となりますので、0.8%も引かれている個人投資家は割を食っていることになります。ただし、個人向け国債は流動性に長けていますので、0.6%は流動性プレミアム分ディスカウントされていると考えるべきなのでしょう。

***


僕の結論:スポットレートを用いた債券価格の計算では、個人向け国債への投資は“否”ということになります。いずれの場合もNPVはマイナスとなり、魅力に乏しいと言えそうです。流動性が高いので、インフレヘッジ資産として使えないこともないと思いますけど。。。
[ 2007/01/12 01:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)

国債の現在価値(2)

金利の期間構造理論
前回 に引き続き、超長期国債を例に取ってファイナンスの勉強をしてみます。
前回は割引率(r)を普遍だと仮定して計算しましたので、金利の期間構造を無視した債券価格を導き出しました。ところが現実的には長期に渡れば渡るほど金利は上昇しますので、割引率は一定ではありません。

実は債券の価格は、それぞれの期間のキャッシュフローを期間ごとに応じた割引債(ゼロ・クーポン債)の複利最終利回り(スポット・レート)で割り引いた現在価値の合計とされています。日本ではゼロ・クーポン債は発行されていませんので、スポットレートは利付債のイールドカーブから概算します。

ここではリスクニュートラル のサイトを利用して、スポットレートを概算します。
期間[年] インプライドフォワードレート[%] スポットレート[%]
0.5 0.314493 0.314493
1 0.744217 0.529355
2 0.957392 0.743374
3 1.165448 0.884065
4 1.483291 1.033872
5 1.792538 1.185605
6 1.712862 1.273481
7 1.832351 1.35332
11 2.175401 1.652258
21 2.55381 2.081569
31 3.082985 2.404606


記載のない期間のスポットレートは比例計算で求めることとします。(本当は計算式があるのでしょうが、、、)
毎年3万円(利率3%)もらえる30年債の現在価値PVは

PV = 3/(1+0.0053) + 3/(1+0.0074)^2 +3/(1+0.0088)^3 + ,,,+ 103/(1+0.0237)^30 = 117.14万円

となりました。
前回と比べて、現在価値PVが変化していることがわかります。
上で示した金利と期間の関係が右肩上がりである関係を、“金利の期間構造理論”と呼ぶそうです。ファイナンスを数学的に勉強してみるとなかなか面白いですね。
[ 2007/01/12 00:00 ] 投資理論 | TB(0) | CM(0)
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